「あちこちが痛くて、動くのが怖い……」 そんな風に感じて、家の中でじっとしてしまうことはありませんか?
実は、慢性的な痛み(慢性疼痛)を抱えているときこそ、無理のない範囲で「動くこと」が最高の薬になります。今回は、痛み神経科学でも注目されている「EIH(運動誘発性痛覚減退)」を引き出すための、簡単で効果的な2つの習慣をご紹介します。
1. 脳が作る「天然の痛み止め」を引き出そう
私たちの体には、運動をすることで脳からエンドルフィンなどの鎮痛物質を出す「天然の痛み止め工場」が備わっています。これを専門用語でEIHと呼びます。
慢性疼痛の状態にある脳は、少しの刺激にも敏感になり、「動く=危険!」とアラート(痛み)を出し続けています。この誤作動を解くカギが、「動いても安全だ」と脳に再学習させることなのです。
2. 「壁押し」で上半身からリセット
「ウォーキングすら億劫」という日にぜひ試してほしいのが、その場でできる壁押し(アイソメトリック運動)です。
- やり方: 壁に向かって立ち、両手を肩の高さでつきます。全力の半分くらいの力で、じわーっと10秒間壁を押し続けます。
- ポイント: 息を止めず、10秒経ったらパッと脱力してください。
関節を大きく動かさないため、痛みを誘発しにくいのがメリットです。この「ギュッ」という筋肉への刺激が、脳の痛みセンサーをリセットし、全身の血流を促すスイッチになります。肩こりや背中の重だるさを感じている方には、特におすすめの「最初の一歩」です。
3. 「ウォーキング」で全身の循環を整える
壁押しで少し体が温まったら、次はウォーキングです。歩くことは「第二の心臓」である太ももの筋肉を使い、全身に新鮮な酸素と栄養を届けます。
- 時間は「15分〜20分」で十分: 長く歩くことよりも、リズミカルに歩くことが大切です。
- 「痛気持ちいい」を基準に: 痛みの強さを10段階で表したとき、5を超えない範囲で歩きましょう。
- 翌日の自分に聞く: もし翌朝に痛みが強まっていなければ、それはあなたの体にとって「適切な負荷」だった証拠です。
4. 大切なのは「完璧」ではなく「継続」
慢性疼痛のリハビリにおいて、最大の敵は「完璧主義」です。 「今日は5分しか歩けなかった」「壁押しを1回しかできなかった」……それでいいんです。ゼロではなく「1」でも動いた自分を、ぜひ褒めてあげてください。
運動と正しい食事(EAT)を組み合わせることで、体は少しずつ、確実に変わっていきます。
おわりに
痛みはあなたの敵ではなく、脳が出している「守りのサイン」です。 「壁押し」と「ウォーキング」を通じて、脳に「もう大丈夫だよ、動けるよ」と優しく伝えてあげましょう。
まずは今日、目の前の壁を10秒間、じわーっと押してみることから始めてみませんか?
